最後まで見てきて良かった。
…もう、本当にこの一言に尽きます。
また、この世界の人々と同じように、
「何かに怯える自分」と「ありのままの自分」を天秤にかけ、
不条理な現実を生き続けている人に送る一種のメッセージドラマだというのが
最終回でより明白になったので、
野木さんはこれをお伝えしたかったんだ…と、素直に納得出来ましたね。
劇中の言葉をお借りするなら、人生は「大航海時代」なんだと思います。
死ぬというゴールまでには、何十年もの長い長〜い年月を過ごしていて、
その間に、幾多もの成功や失敗を経験するし、
数万人のうちの何人かとの出会いや別れも繰り返す。
どこかで感情的になり、大きな挫折を味わう事だってあるかもしれない。
でもそれは、「終わったんじゃなくて、変わっただけ」。
晶(新垣結衣)と恒星(松田龍平)とのやり取りで、こんなシーンがありました。
晶 「鮮やかには変われなくても、
ちょっとずつ変わって行って苦くなくなるんだよ。このビールみたいに。」
恒星「熟成されて?」
晶 「フルーティに。」
恒星「飲んですげぇ不味かったらどうする?」
晶 「それでも飲む。」
この会話を聞いて、ビールをモチーフにした理由が
何となく分かるような気がしました。
恐らく、自分らしい生き方の模索=ビール なんだと思います。
最初は苦いと感じていても、慣れると徐々に美味しいと感じられるようになる。
ここは、考え方次第で自分は変われるという事を伝えたかったんだと。
そして「雑味」と呼ばれるビールの泡は、今までの経験の積み重ねではあるけど、
普通のビールで例えるならそれは決して無駄な物ではなく、
泡が美味しいという「喜び」に変わる。失敗は成功の元とも言うでしょうか。
熟成されればコクも増して
「自分らしい人生」の経験値を積めたとも表現出来るかもしれません。
以前の晶の言葉「ビールくらい好きに飲ませて」も含められますね。
これらはあくまでも個人的な解釈ですが、幾つも比喩で例えられるような
モチーフを選んだのは、本当に凄い事です。
ただの「一息の場所」じゃなくて、深い意味も秘めていたんだと、
ちょっと感動しちゃいました。
最後のシーンの、晶と恒星の頭の中に鐘の音が鳴ったか鳴っていないかを
ハッキリさせない演出は、かなり余韻の強い印象的なものでした。
動いていたので鳴ったのだろうとは考えられますが、
本作は「ラブ"かもしれない"ストーリー」ですから、
音を出さないのは正解だったと思います。
「♪鐘が鳴るはず」と歌う挿入歌の音量を大きくして行き、
鐘にフォーカスを当てた所で音楽が止まる演出にも思わずゾワッとさせられました。
ラブを取り扱ってはいるけれど、
キスじゃなくて手を繋いで締めるのも、
「好きになるかもしれない」までの過程を描く物語だったのも、
とても斬新なものでしたね。
人生において、飲み仲間という、友達、恋人の枠を超えた関係だって作れる。
「人の繋がりとは何か」を新たに提示してくれた本作との出会いに感謝します。
総括
いやはや、色々とモヤモヤとした気持ちにさせられるドラマでした…。
それくらいには(文章が長くなるくらいには)心に突き刺さって、
思い入れも深い作品だったのかもしれませんね。
ただ、もう一度見たいかというと…完全に「NO!」です(笑)
飲み過ぎた後のタプタプのお腹みたいに、満腹状態になった気分です。
視聴前は、「野木亜紀子×ガッキーのタッグが再び!」という事で
期待も高まっていましたし、予告を見るからに可愛らしいストーリーなんだろうなぁと
勝手に思っていたので、いざ見るとなるとまんまと予想を覆されました。
8話くらいまでフラストレーションが溜まる展開が続くなんて、前代未聞です(笑)
私もよくここまで見てきたもんです…その分、スカッと終われて良かった!という
晴れやかな気持ちが大きかったですが。
そう思うと、近年の中ではかなり攻めた作品でしたね。
晶の家族の事や千春の介護の件、京谷と呉羽が寝た事など、
多少盛り込み過ぎな印象は伺えましたが、まぁ…終わり良ければ全て良し!です。
登場人物みんなが結末に向かって、自分らしさを模索する様子を見て
普通に微笑ましくなるくらいには、少しでも各キャラに愛着が湧きましたし。
(ただし、社長は除く^^; 会社の立て直し、頑張って下せぇ…!)
一言で感想を表すならば…
「面白い」と言うより「興味深い」ドラマでした。
内容をリアリティの方向に突き詰める事を得意とする野木亜紀子さんが、
「日常」をテーマにして描くとこんな作品になるんだという事も、
今回で充〜〜〜〜分わかりました。
社会派メインの作品が拝見出来たらと思います。
お待ちしております。
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