僕らは奇跡でできている 10話(最終回) 感想と総括(3ヶ月間ありがとうございました)

 

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本作らしさを最後まで貫き通しましたね。

深く考えさせられる所もあれば、思わずクスッとなるような所もあり、

ファンタジーと現実世界のバランスのとれた素敵な最終回でした。

 

宇宙の下りは視聴者の想像で任せるんじゃなくて、

「本当に行ったんかい!」というシーンで締める粋な遊び心。

私は結構好きでしたよ。

挑戦しようと思えば何でも出来るって、背中を押してくれたみたいで。

(CGが丸分かりだったのは置いといて(笑))

 

これ以外にも、本編では2つのメッセージを届けてくれました。

 

全ての事柄や出会いは「自分の可能性」に帰結する

 

まず、前半で、須田(広田亮平)の「変わりたい自分」と

相河(高橋一生)の「変わった事による悲しみ」の対比が描かれました。

 

須田は尾崎(北香耶)にこう言います。

「良いよな、尾崎は変われて」

 

その次に流れたのが相河のシーン。樫野木(要潤)の言葉に深く傷ついた相河が、

おじいちゃん(田中泯)に伝えたのが…

「光を大きくしたら嫌な事まで入ってきて、辛くなっちゃって…」 

 

二人の共通点を考えるなら、「新たに出会った人に強く影響を受けた自分」。

また、その出会いは決して良い事ばかりではなく、思わず悲しくなってしまい、

終いには関係が壊れそうになる事だってあるというのも描いています。が…

 

それが決して、自分にとって無駄な事ではない。と教えてくれるのが本作です。

相河に対するおじいちゃんの答え「良かったな」は彼だけでなく、

私を含む視聴者の人生までも肯定してくれているような気がしました。

悪い事を悪い事としない。考え方を変えれば、自分を変化させてくれるきっかけになる。

おじいちゃんの簡潔なアドバイスは、今回も優しいものでした…

 

その言葉を受け、森に戻った相河が目指した場所は大きな樹。

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1話にも出てきましたね。

最初は自分の思いのままに生きていた相河が、違うフィールドでまた様々な事を学び、

他人にも興味を持ち、「新たな自分」として再びこの場所に帰ってくる。

その樹のそばで出た結論が…

「辛い気持ちだって、光だから」

 

私は1話の感想で、この樹の事を本作の象徴だと書きました。

結論と共に、今まで相河自身が経験した出来事の回想がフラッシュバックしていく様は、

まるで幾多もの枝で表現出来ますし、

大きくそびえ立つ姿は、相河の眠る無限大の可能性を

秘めているとも感じ取れるでしょう。

なので、講師を辞める事を決意した場所がここだというのは、とても納得です。

大きな樹は、相河一輝という人物の分身でもあるのですから。

 

「自分を活かしきる」が最後のメッセージ 

 

また、鮫島(小林薫)が履修生に送るアドバイス→育美(榮倉奈々)の流れも

自然なものでした。

説明がなくても、生き方のヒントをさり気なく教えてくれます。

 

鮫島「やりたいことを探すのはいいけど、そんなのは簡単に見つからない。

   見つかるかどうかわからないのを探して

   自分の人生をちゃんと考えてる気になったり、

   逆にやりたい事が見つからない自分はダメだって

   責めたりする人がいるかもしれないって。

  (樫野木の言葉を聞いて)なるほどって思ったよ。」

 

「でも、こう考えるのはどうかな。君たち、相河がいつも持ってる缶知ってるよね。

 ガラクタみたいなのがごちゃごちゃ入ってるけど、

 相河がやってる事はその中に入ってるものをどう生かし切るかって事だと思う。」

 

「例えば、アイスの木のスプーン普通はゴミだよね。あれをどう活かすか。

 フィールドワークではちょっとしたことに役立つ。

 種や苗を植えた時の目印にしたり、魚を釣る時の浮き輪にしたり、
 スプーンはスプーンのままで他の何かにならなくても色々と活かされる」

 

「スプーンは他のものと比べて何が出来るか出来ないとかではなく、

 ただ、そのものを生かし切ることが大事なんだ。」

 

鮫島の言う内容を「基礎」とするならば、

育美が「これ以上の事は出来ないのかな」と考え始めるのが「応用」。

 

自分の持ってるものを活かしきれば、

もっと何かやれるんじゃないかという余裕が出てくる。 

苦手なものだって当然出てくる。

だけど、相手と共有し合って上手くかわし、得意とする事を最大限にやり続ければ良い。

 

これが、現代社会を生きる視聴者への、最後のメッセージでした…。

 

「僕らは奇跡でできている」を、終盤で見事に表現

 

終盤では、樫野木の授業の様子や、

新庄(西畑大吾)がコンチューバーとして夢を実現する姿、

虹一(川口和空)が母にテストを見せる様子、育美の元彼の新たな趣味、

育美の挑戦など…出会いによって変われた人々の今後を全て見せてくれました。

 

相河が、以前は全く興味のなかった水泳やロシア語の勉強を

育美が経営学や中国語を学んだ事から影響を受け、挑戦し始めるのと同じように、

「人生には未知数なものが秘められている」。何が起こるか分からない。

 

周りの人との出会いは、日本中の人口で考えればかなり稀有なものだし、

その出会いがなかったら、今の自分は存在していなかったかもしれない。

影響を与えた者は与えっぱなしじゃなく、逆に「影響を受けた側」が

自分を変えてくれる事だってある。

自分の持っているものを導き出してくれる事だってある。

 

だから「僕らは奇跡でできている」。

 

また、今回のスタッフクレジットは、全部の文字に色が付くという予想外の演出でした。

木のスプーンやガシャポンのように「いらない物なんてない」し、

「それぞれの人に可能性がある」という事を伝えるには最適でしたね。

 

 

***

 

総括 

 

本当に素敵なドラマでした。

本作は「普通を違った見方にも出来る事」「自分と向き合う事」を教えてくれましたが、

それを押し付けがましくなく伝えるのってとても難しい事だと思います。

 

難し過ぎず軽過ぎず、でも心にスッと入るような深い言葉を

生み出すにはどうしたら良いか。

ファンタジーと現実世界の塩梅のとれた世界観にするにはどうしたら良いか。

それを視聴者にどう届ければ良いか。

独自の作風で描き切ろうとする作り手の熱意が伝わってきたからこそ、

私自身も最後まで見届けられた気がします。

 

「自分をいじめてるんじゃないですか?」

「誰でも出来る事は凄い事じゃないんですか?」

「良い所を100個言う」

その結果、幾つもの考えさせられる言葉に出会えました。

 

大きな事件がある訳でもなく、ただ日常で起こっている事を刻々と描き続ける事で、

逆に心に深く刺さったんだと思います。

見るだけに留まらず、実際にピリ辛きゅうりを作っちゃう程、

かなり影響を受けた作品でした。

 

相河を演じる高橋一生さんも、ドラマ以外で見かけても「相河先生だ!」と

思うくらい、かなりのハマリ役でしたね。

少年のようなくしゃっとした笑顔と、目に涙を浮かべて話す姿は、

相河一輝という不思議なキャラクターにはぴったりです。

 

相河の描写だけでなく、(私達に近いような)育美や樫野木、大学生4人の

「必死に今を生きる姿」も丁寧に描いてくれた所も、

純粋な心で溢れているキャラクター造形も、ハイテンポなOP曲も主題歌も、劇伴も…

どれも好きな所ばかりでした。

私の生きているうちに本作に出会えた事がとても嬉しいですし、

感謝の気持ちでいっぱいでもあります。

 

 

また、毎回長くて拙い感想を読んで下さった方も、

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

ごちゃごちゃした文章になりがちですが、RTやいいね、

スターを押してくださった方々のお陰で、

自分の考えを搾り出しながら、最後までここまで描く事が出来たような気がします。

 

お疲れ様でした。

そして、「書きたい!」と思わせてくれたドラマに出会えた事に感謝します。

スペシャルでも良いので、いつか続編を見てみたいです。

 

 

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