「満ちよう満ちようと懸命になれる。だから、そのままで良いのかもしれない。」
「永遠に満ちる事のない三日月のままで…そう、三日月のままで。」
千明(永作博美)が常に何かを追い求めている三日月なら、
吾郎(高橋一生)は彼女が上を目指せるようにと、そっと支えてくれる存在だった。
自分に足りない所をお互いが補い合いつつ、二人の塾を立ち上げ、
それから塾業界の荒波に揉まれながらも精一杯築き上げて駆け抜けてきた数十年間。
価値観の対立、喧嘩、家庭崩壊。今まで味わった苦労が晩期になって
走馬灯のように浮かび上がる回想シーンは…多分、二人をずっと見守り続けた
三日月が「よく頑張ってきたね。お疲れ様」と肩をポンと押してくれていたものなのかも。
全てが上手く行く訳ではないし、挫折する時期だってあるけど、
目標の為にと突っ走って行けば何か光が見えてくるはず。
千明が経験した事によって得た想いは、千明から三姉妹へ、
三姉妹から一郎(工藤阿須加)へと、3世代にも渡って受け継がれていく。
世代間でのバトンタッチでそれぞれが自分なりに、
信念を持って邁進していこうとする姿が、最終回でしっかり描かれていたのが良かったです。
工藤くんはやっぱり、直向きに生きようとする純粋な青年役が似合うなぁ。
吾郎の死を描かなかったのも、まだまだ物語は続くんだという「希望」が感じられます。
家族の思いやりのカタチ、時にすれ違ってしまう切なさを丁寧に描く所も好きでしたが、
時代ごとの塾業界の現状、塾と学校における考え方の差異、そして、いつの時代でも
未知なる可能性を持つ子供がいるのだと伝えてくれた所にもグッと来ました。
昭和と平成に渡る長い年月を全5話でまとめなさいとする
割と無茶ぶりな企画ではありましたが、
不器用な人々が織りなす温かさを描き切り、時間軸の進め方や行ったり来たりが
逆にジェットコースターのようなテンポの良い味わいを
生み出す作品になっていたと思います。
バラエティに富んだ劇伴も楽しかったです。
一生さんの滲み出る優しさと親しみやすさ、永作さんのハツラツとした元気さが
役にぴったりハマられていて、年齢に合わせた演じ方の変化も含めて
両者の演技を堪能したドラマでもありました。
ただ、全5話が故に描ききれてない所があったり(姉妹の苦悩とか)、
最終回では特に駆け足展開になっていたので…
「吾郎・千明の出会い編」〜「塾設立編」〜「三姉妹編」〜「一郎編」と、
朝ドラ形式でも十分行けたんじゃないかとは思いますね。
まぁ…もっと見たい!ってくらいが丁度良いのかな?
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