松本清張 砂の器 感想|残り31分が見所と言いながらあの出来…何なんですかーっ!

 

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いやぁ、最近見たSPの中で一番酷い出来だったかもしれません。

唯一良かったのは柄本明さんの演技だけでした。

本当にこうとしか言えないんです。ごめんなさい。

 

本作を視聴する前に公式サイトをチラッと訪れていたので、

犯人が誰かは最初から分かっている状態で見ていました。

「犯人を明かす」という作り自体は斬新でミステリーとしては興味深いものでしたが、

その捻りが上手く活かせてなかったように思います。

 

犯人を明かす…すなわち倒叙的に見せるならば、

どういう経緯で犯罪を犯すまでになってしまったのか、

何の事情があって今に至ったのか等の

犯人側の物語をじっくり表す事が必要になってきます。

「ああ、確かに犯罪は悪いけど、そうなってしまうのも少し分かるなぁ…」

という共感性を得るのが大事なんです。

そうして初めて、事件の真相が徐々に近づいてきて、捕まって欲しくないのに捕まっちゃう

ハラハラ感が味わえるんですね。

 

ところが、本作の犯人の描写に関しては、

全体的に「ただ何か謎めいてる人」止まりになっていました。

終盤まで秘密が明かされない状態で、成瀬(土屋太鳳)と車でヒソヒソ話してたって、

家でのシーンを見せられたって、何も感情移入は出来ません。

犯人の正体を掴み取るまでのごく一般的なミステリーのような

構成に仕立て上げたのが一番致命的で、

警察が(あっさりだけど)順々に捜査し始めたり、

怪しげな人物をぽんぽん配置したりしたって、

「どうせ怪しくないんでしょ」「良いから早く事情を教えて」という冷めた気持ちで

視聴者は見てしまっていたと思います。少なからず、SNSではそんな人が多かったです。

 

で、ラテ欄などで「衝撃の31分〇〇秒!」と煽った割には、その見せ所も肩透かし…。

個人的には、今西(東山紀之)と和賀(中島健人)が取調室で見せる

緊迫感ある対峙シーンを期待していたので、

クライマックスが今西の妄想語りで終わったのには違う意味で驚き。

更には、妄想だけで確実な証拠を得ていないのに、よく逮捕状出せたね…とも。

何のフリもなく、和賀の生い立ちはここで全て後出しじゃんけんにしたため、

今西が感情こもって喋ってるのを見たって全然ピンと来ません。

 

ストーリー面もどうかとは思いますが、

今時っぽい渋谷のハロウィン騒ぎを取り扱った割には画面がセピア調…

捜査会議のシーンが古臭い…という

平成と昭和でちぐはぐな見せ方になっていたのにも残念でした。

あと、劇伴がやけに洒落たものばかり使っていて、音量が大きかったのも、

正直言って話に入り込みづらい要素の1つだったんじゃないかと。

この間1時間程度ざっと見た「二つの祖国」もそうですが、

脚本だけでなくやはり音楽選びも重要だなぁと考えさせられます…。

(二つの〜に関しては、差別されてる側の苦悩を表すシーンが立ち話ばっかりで、

その時代を生きる人々が描かれてないな〜って事もあって、録画をそっと消しました(笑))

 

演者側も演じるには大変そうな役が多かったですね。

特に、ファンの方には申し訳ないけど、健人くんにシリアスな役は合わないかな〜。

手でちょっとポーズを取るにしたって中の人らしさが前面に出てきちゃうし、

驚く時や泣きわめく時の演技が大げさっぽくて…^^; 明るい役の方が良いのかも。

 

成瀬が切り屑を列車からばら撒くシーンは美しかった…

多分、こんな印象だけで、内容の方はすっかり忘れてしまうドラマだと思います。

 

フジドラマ、また失速しつつあるから、頑張って欲しいんだけどな。