濱田というキャラクターはムロさんの新境地であるとは思いつつ、
ダークヒーローの役を演じる事に、正直、少しの違和感を抱えていた本作。
しかし、今回は濱田を通して魅せる"変化"の演技で、かなり見る目が変わりました。
松本(伊藤英明)のいる所に革靴でまたいで入っていく、
"境界線"を思わせる印象的なカットから始まった砂場のシーン。
「入院している子供がどれだけ外で遊びたいか知ってる医者が、悲しくない訳ないんだよ」
次々と思いやる言葉をかけられた途端、徐々に感情…いや、本心を見せる姿は、
まるで、強い自分であろうと張り詰めていた糸がプツンと切れたかのよう。
松本と憲次(泉谷しげる)が楽しそうに話している様子をじっと見ていた濱田。
自分にも本音を話せる相手がいたら…という、どこか羨ましい気持ちがあったのでしょうね。
今まで、自分の技術と頭脳だけを信じ、夢を叶えるためならどんな事も犠牲にする
孤軍奮闘なキャラクターとして描かれてきました。
彼に「全力でサポートする!」と力強く言ってくれる相手はかつていただろうか?
自分以外を信じてみる事があっただろうか?
そんな風に考えながら見ていた分、念仏により手の震えが止まり、手術は無事成功して
患者の母に「助けられたのは僕の方です」と伝えるラストには、
思わず胸にくるものがありました…。
タイトル通り、俺の前で念仏を唱えるなと、いつもの嫌味ったらしい様子で言ってきた濱田ですが、
それも彼なりのご愛嬌ってやつで。
「ありがとさん」「はい、で〜きた。」ただの口癖でも、言い方次第で
松本にどれだけ救われたか…という感謝の気持ちが伝わる演じ分けが素晴らしい。
一方で、松本の方も、今までの話の中で一番「医者や患者にとっていなくてはならない存在」
になっていました。
主人公が説教臭いのは所謂"軽い"医療ドラマではよくある要素ですが、
本作の主人公は僧侶でもあるため、画面からうっとうしい雰囲気も感じさせず、
1つ1つの言葉が自然と耳に入っていきます。
濱田の腕をガッと掴む逞しい手。
泣いている濱田にあえて目を合わせず、一緒に黙々と砂遊びにとりかかる姿。
近くにいると心強いんだろうな…安心するんだろうな…と思わせるには
説得力のある演技で、こちらもますます魅力的に映りました。
ダメダメな患者を殴った辺りから(確か5話?)
医者と僧侶の掛け持ちであるという設定が活きてきたような気がしますし、
仏教も上手く取り入れられるようになった印象の本作。
初回のごちゃごちゃした作りを思うと、見違えるほど面白い作品になりました。
最終回はポッと出の通り魔の話がまとまるのかどうか少し不安ですが、
期待して行きたいです。
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