息子の敵討ちなら、最初から加害者の町田(永井大)を刺しに行けば良いものを、
なんで息子の血液を使ってまでまわりくどい方法で脅したのか?
それに、愛していたんだという過去は台詞で解決しちゃうのか…と
途中まで疑問に思いながら見ていましたが。
なるほど、「いつまでも小さい子供の時のように、
想いがそのまま通じ合う関係が続くとは限らない」という
母親側の苦さと皮肉を描きたかったんだと理解出来ました。
子供の愛し方をどこかで間違えてしまった母・千沙子(若村麻由美)。
家には母から、会社には上司の呪縛から逃れるためには
命を経つ方法しか考えられなかった貴之(葉山奨之)。
自身にはどうしようも出来ず、
父として向き合おうとせず現実逃避してしまった父(小市慢太郎)。
現代の家族にある"ゆがみ"を垣間見たような気がして、
バラバラになったまま迎えてしまった貴之の死に、
母と一緒にやるせない気持ちになったラストでした。
内容的には(良い意味で)モヤっとするもので、
貴之を追い込んだ根源の町田がお咎めナシなのも、
過保護な母が悪いように捉えられ、ネットニュースのターゲットにされるのも
むず痒くなる余韻が残りましたが。
でも、「確実な証拠がないと逮捕出来ない」
「真相を知らないまま簡単に人を叩ける」のが今の世の中でもあって。
そんな社会事情を反映したという点でも、見応えのある話になっていたと思います。
本作の見所でもある「魅せる演技」に関しては、
今回の場合は若村麻由美さんが特に光っていました。
穏やかに話していたのが、沸点が急に上がるかのような怒りの感情を露わにする様には
思わず背中が震えるほどでした。
粗のある殺害方法でも、なんだか勢いで圧倒されちゃいます。
強いて言うなら、やっぱり勿体ないなと感じるのが
トリック部分と獅子雄(ディーン・フジオカ)が証拠を掴む見せ方の2つで。
トリックの方は、本来死臭がしそうなものを部屋に隠したり、
あからさまにツリーを置いたり、なぜ水槽ポンプを捨てなかったのか?と、
探偵じゃなくても十分怪しいです。
「それがヒントになっていたのか!」という捻りが欲しい感じです。
で、その「それがヒントになっていたのか!」ですが、
獅子雄が証拠を見つける→解決の流れにそれが使われていると思うのですが、
こちらは獅子雄の脳内だけで完結してしまっている気がして
もっと視聴者が一緒に推理を楽しめるような見せ方をして欲しいと考えてしまうんですよね。
例えば、ドアノブをチラッと見ていたのは「あ、何か気づいたな」と分かりましたが、
ダンボールや水槽ポンプが事件に関係しているのも、そもそもいつ映していたかも
分からないくらいあっさりしていて。
録画でもう1回見返せば良いじゃん…の作りじゃなくて、
もうちょっと獅子雄の目線で物語が繰り広げられて行ったらなぁと思ってしまいました。
(何か見落としがあったのならすみませんが、(犯人の分かりやすさ関係なく)
今回だけでなく「あれ?いつどこで掴んだ?」と思う部分が度々あったので
自分なりに文章にしてみた次第です。)
それでも、OPの入り方のスタイリッシュさや役者の演技、洒落た主題歌で
いつも良いものを見た気分になってしまうので、決して面白くない訳じゃないんですけどね。
獅子雄と若宮(岩田剛典)、江藤(佐々木蔵之介)のトリオの楽しさなど
好きな部分もあるんですけども…本筋の事件パートがなぁ…!と
ついつい欲してしまいますねぇ。
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