珈琲いかがでしょう 8話(最終回) 感想|コーヒーで受け継がれる無償の愛

 

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暴力珈琲

 

みんな青山(中村倫也)の事好き過ぎか!(笑)

最終的には、彼をめぐる仁義なき争奪戦に。

でも…そうなるまでに、3人はそれぞれ青山から、

ぼっちゃん(宮世琉弥)は更に二代目(内田朝陽)や夕張(鶴見辰吾)から

思いやりという名の愛をもらっていた。

そんな過去が描かれました。

 

青山が去ってしまったのには、やはり、二代目が渡したボーナスと、

その固い意志を受け継いだ夕張が関係していましたね。

せめて二代目が遺書として残してくれれば…

夕張が早い段階で伝えていたら騒ぎにはならなかっただろうに…とは思う部分もあるけれど、

どちらにせよ「自分を好きでいてくれた人が突然いなくなってしまった」という事実は変わらず、

頼れる人がいないまま一人で組を継がなければならない重圧や孤独感は

感じてしまっていた事でしょう。

 

子供の時には分からなかった会話の内容や、自分の知らない所で命がけで守っていてくれた事に

青年になってから気づかせる…

三代目として組を築き上げながら成長したぼっちゃんに委ねてみるのも、父としての"愛"ですし。

二代目の遺志や、日々満たされない想いでいたぼっちゃんの気持ち、

青山が去ってしまった真相全てを知りながらも、

「最適なタイミング」が訪れるまで胸にそっとしまいながら近くで見守り続けてきたのも

パートナーとしての"愛"。

 

愛が何も、表面上の分かりやすい形として示されたものばかりではなく、

ゆっくり時間をかけるからこそ出来るものだってあるんですよね。

それは、美味しいコーヒーになるまで待ち続ける状態と似ています。

 

ぺい(磯村勇斗)が"親に捨てられた者同士一緒に暮らしてきた兄貴"への愛を語り、

その流れで今度は垣根(夏帆)が"コーヒーに一途な青山さん"への愛を語った途端、

ぼっちゃんは「あんな女に取られたらたまるか!」という、

子供の頃から強い人になろうと努力してきた負けず嫌いな性格を覗かせる。

このやりとりだけで少なからず、

自身が組の三代目である自覚を持って生きる決心はしたのだろう…といった

希望は感じられました。

 

一緒にコーヒー牛乳を飲んでくれる人はいないし、

自分のために毒入りコーヒーを飲んでくれる人もいない

彼の更生を描くエピソードでもありました。

 

ポップ珈琲

 

たこ(光石研)と幸子(市毛良枝)の若年期のお話。

でそのキャスティングが…どことなく懐かしい香りが漂ってくる、

良い所を持ってきますよねぇ。

森迫永依さんは23歳かぁ。私の記憶では「ちびまる子ちゃん」で止まっているよ…(笑)

前田旺志郎さんは歳を重ねたら、そのうち寅さん役を演じそう。

 

子供を産み、元々体の弱かった幸子を悪化させてしまったたこは、

自力で養ってあげられない事に責任を感じて、彼女の両親に療養費をせびったまま

姿を消してしまったらしい。

自分がいなくなれば親とも仲直り出来るかもしれない…

もっと財産のある良い人と結婚したら幸せになるのかもしれない…

そんな想いで行動をとったんでしょうけど、それは逆に、若いからこそ出来る"愛"でしょ。

三者から見たら無責任過ぎる…(泣)

でも、彼女も彼の気持ちが大人になってから分かったのか、

過去を話す時も嫌な顔1つもしない優しい人で良かったです。

おじいちゃんの所に嫁がせるより、ずっと素敵な出会いでしたよ。

 

幸子がたこの遺骨を砕いてカップに入れ、そのコーヒーを飲む姿には

最初はギョッとしましたが、

心で繋がり、互いを求め合っていた2人が、コーヒーを通じてようやく1つに繋がる…

この、一見突飛でも、場面を明るく照らしてくれる流れこそが、

本作で伝えたかった"ポップ"なのかもしれませんね。

 

たこの遺骨が青山にとっては"魂"に変わり、

その魂には青山の想いが、今度は垣根、ぺい、ぼっちゃんと様々な人の想いが混じり、

また新しい誰かに受け継がれていく…。

未来を感じさせる、爽やかなラストでした。

 

***

 

「人は"ひとり"ではない」を一貫して描いた作品でした。

癒される時間になりそうだなぁ…と思っていた初回の頃とは違った形になりましたが、

3話での一人で生きて行く覚悟を決めた「金魚珈琲」だったり、

4話での奥さんに今でも未練が残り、後悔の念を抱えている「ガソリン珈琲」だったりと

決してストレートにハッピーエンドとは言えないような話もあった事から、

本作は一杯のコーヒーを通して、

それぞれにしかない"人生"を映し出す物語なのだと思えば納得の出来でした。

 

評判を見てみると、中盤からずっと描かれてきた暴力的な描写が好みではない人、

「もっとほんわかした作品になると思っていたのに」と言う人も散見されましたが、

私は全然アリだと思っていました。

青山の"人生"でもあるから。

 

たこの入れたコーヒーが好きだからと、たくさんの住人に慕われていたように、

青山も暴力団の世界では「兄貴」と慕ってくれるぺいがいて、懐いてくれるぼっちゃんがいて、

仕事が出来る事から上司にも期待の目を寄せられていた。

それらの信頼を全て裏切り、全く住む世界の違う移動珈琲屋へと転向したら

引き止めてしまいたくなるのも仕方がないでしょう。

で…その手段が、彼らは頭脳でも誠実さでもなく、

暴力でしか表せなかっただけなんですよ…きっと。

 

垣根も移動珈琲屋の店主に…という事にはならなかったですが、

ぺいはアルバイトとして働くみたいなので、

私の思い描いていた理想はほぼほぼ叶った感じですね。良かったです。

まぁ、あのラストを見れば、垣根がお客さんのままなのも自然かな?

いつか自分で店を作る日を夢見て…

 

ゲストはいくらでも呼べそうな内容ですし、

SPドラマとして、青山&ぺい+垣根の今後を描く続編を定期的に見てみたいです。

 

そして来週からはもう次のドラマが。

また飯テロだ!

西島さんだとどうしても、ただの名探偵には思えなくてですね…(笑)

 

 

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