東野圭吾 手紙 感想

 

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ここ最近のドラマでは、犯罪で捕まっている被害者や親族の冤罪を

弁護士が晴らす系の話が多いような印象ですが、

本作はあくまでも「犯罪者の弟が過ごした日々」を真っ直ぐに描いたSPドラマ。

 

主人公やその周りの様子や変化をじっくり描いていく様は

まるで映画みたいな作りで、2時間弱最後まで引き込まれながら見続けられました。

中々興味深い作品だったと思います。

 

題材はとても重い物を扱ってはいますが、見ていてグッタリする気持ちにはならず、

でも心にスッと突き刺さるような…そこの塩梅がとても上手かったですね。

暗めではなくちょっと彩度を落とした程度の映像と、薄く流れ続ける劇伴、

役者方の「静」の演技のお陰で、そう感じられたのかもしれません。

 

何か悲しみや辛さを抱えたキャラクターが多い中、

唯一明るめの性格の女性を演じた本田翼さんの存在は、

作品を引き締める重要な役割を担われていたと思います。

この方以外にも勿論、印象的なシーンはいくつもありました。

緒方(田中哲司)と直貴(亀梨和也)が対峙するシーンや、

緒方がタバコをふかしている時の表情。

そして、直貴が兄宛の最後の手紙をポストに入れるまでの行動に、

坂道を上り下りする映像と直貴のナレーション、

家で直貴の事を心配する由美子の姿を重ね合わせる演出…

 

特に、直貴が慰問コンサートで歌い上げるシーンには

思わず込み上げてくるものがありました。

亀梨さんの目や声からは、今までの苦しみが現れ出ていました。

歌う所を長く映したのは、"13年間"過ごしてきた日常や自身の生き方の変化の過程を

番組内での「放送する時間」を利用して、兄にぶつける想いを

演出家側がストレートに伝えたかったからでしょう。

 

強いて言うならば、刑務所にいる兄の剛史(佐藤隆太)の姿をもっと見たかったし、

「弟がそんなに辛い日々を過ごしてきたなんて知らなかった」という、

ある意味"被害者"の立場になっている弟の現状をよく分かっていないような

呑気さも気になりましたが(手紙を読み上げる声のトーンも…)

…まぁそこは許容範囲で。

 

「差別は人間の本能。差別はなくならない」が本作の贈るメッセージなんだと思います。

差別の消えない現実を痛感し、加害者側にも被害者側にもなった主人公が

どう自分と向き合っていくのか…そんな物語でしたね。

平成23年のヒット曲や昔の分厚いiPhoneなど、

時代に沿ってちゃんと作られている(小物を選んでいる)所も好感触です。

 

見て良かったなぁと思える作品でした。