ドラマスペシャル スイッチ 感想|偏屈でもどかしい大人の"人間愛"

 

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いや〜…坂元裕二作品、やはりハズレがないですね。

刑事ドラマが多く、硬派なイメージのテレ朝ドラマにも溶け込めちゃう。

 

序盤の階段を上から突き落とすという2サスあるあるのシーンで

犯人の顔を既に見せる時点で、ただのサスペンスではないとは思ったけれど、

そこからの展開の切り替わりっぷりが容赦なかったですね。

「カルテット」らしいクセ強めの人物しかいない会話劇が繰り広げられて

クスクスさせられっぱなしだった途端、

星野(石橋静河)から告げられる真実の重さに

さっきまで楽しんでいた私の頭が鈍器で殴られたような感覚に襲われて、

また更に深い部分へと踏み込んでいく…。

「スイッチ」って何だ?ユルいコメディからシリアスへの方向転換?

あぁ!真の「スイッチ」はそれかーー!!

回を増すごとに物語がクライマックスに近づく連ドラではなく、

2時間の放送内で感情がグワングワン揺さぶられて惑わされる心地になる作品は

随分久しぶりでした。

(そういえば、松たか子さん、「カルテット」では終盤で偽名を使っていたという

大きな秘密を抱えていた役だったっけね…(笑))

 

途中まで見て、このヘビーな内容を連ドラにしないのは勿体なかったなぁとも

思いましたけど、最後まで見終わってみれば、単発で正解だったと思いますよ。

連ドラだと多分JOKERになりかける円(松たか子)を直(阿部サダヲ)が止めるくだりが

途中からパターン化して行きそうですし、

坂元さん自身も描きたい所は「不条理な世の中に対する怒り」「歪んだ正義感」じゃなくて

「ちょっと拗れた変わった形の"人間愛"」だったでしょうしね。

 

2人は人生の中で恐らく一番辛い経験を分かち合っていて、

お互いが一番の良き理解者でもあるのだけど、

それは裏を返せば愛には発展せず、良くも悪くも"親友"の関係で止まってしまう。

時間を共にしている内に自ずとそこは分かってしまって、分かっていたから別れたし、

今後も元サヤに戻る事はないのかもしれない。

最初は馬が合わなそうな相手と付き合ってるなぁと感じたのも、

もしかしたら自分の中の闇と程よい距離感を取りたかったからその人を選んだ…

という可能性もあるんだと思いますよ。

でも、直と円だけしか知らない秘密があるように、

ロマン思考の持ち主の貴司(眞島秀和)と亜希(中村アン)も

恋人には言えない(言わない)秘密がある。

そんな、人って案外相手の事を分かっていないのかもよ…という

ほんの皮肉が混じったお話だと受け取りました。

 

(序盤の段階で)なぜこの人と付き合い出したのか全然理解出来ないと思わせる

眞島秀和さん&中村アンさんのキャスティングも妙にしっくり来ましたし、

本来なら重くぐったりとした内容になり、コメディとシリアスのちぐはぐ感が出てしまう所を、

阿部サダヲさんを主演にした事で雰囲気を和らげ、小ネタ要素を忍ばせる坂元作品の作りと

良いバランスが保てていたんじゃないかと思います。

 

ミニドラマ、SPと来たら、今度はやはり連ドラが見たいですねぇ…。

首を長くしてお待ちしてます。

あ、そうそう、来週の「必殺仕事人」の流れは狙いましたよね?(笑)