じんわり、ほっこり。でも時々グサッと。
雰囲気は地味ではありますが、しみじみと良いドラマだったと思います。
本作のテーマである「働くとは何か」から始まり、
「学校教育」「AI」「SNSの持つ怖さ」「フェイクニュース」などの社会的なテーマを
説教臭い作りにせず、あくまでもドラマ1作品として落とし込もうとする手法は
上手いですよね。NHK。
岡山天音さんに心が折れやすそうなヘナっとした役を演じさせたら安定感がありますし、
飯豊まりえさんの方も、どこか不思議ちゃんな役がぴったりハマっています。
そんな2人が織りなすやり取りは、見ていてとても楽しい、楽しい。
飯豊さん演じる青木のペースに引っ張られる高橋(岡山天音)…という関係性は、
ちょっとおかしくて可愛らしくて、印象的なものでした。
でも、冒頭にも書いたように、ただほんわかするだけでなく、
働く人に向けてのメッセージもいくつも込められています。
好きなタイプは少女漫画の登場人物。
命の電話が繋がらないのは、他にも同じ想いを抱えてる人がいるという事。
世界は広い。いろんな生き方をしている人は何人もいる。
イワシと一緒で、弱い者は群れていた方が良い。
これらも考えさせられる台詞ではあったんですが、特に刺さったのはこれでした。
青木「食べるために働いてるのに、働いてると食べる時間がない。
これって、おかしいですよね。」
確かに、生き抜く基盤の「衣食住」のために頑張って働いているのに、
残業ばかりの日々で疲れたからコンビニ弁当…じゃ本末転倒ですよね。
週休2日。就業時間8時間+残業あり。正社員。
この条件は決して当たり前じゃないんだよ。自分らしい生き方をして良いんだよと。
そうして彼女が選んだ答えは、週休4日で弁当屋で、パートとして働く事でした。
「食べるために週休4日にしました。」週休4日が彼女にとっては、
自分の時間を作れるのと生活費を稼ぐ、丁度良いバランスだったのかもしれません。
また、こけしの扱い方について、青木が高橋にこう言うシーンがありました。
①日光に当てない事。色が退色してしまうから。
②水に濡らさない事。濡らすと染料が滲むから。
③さみしくさせない事。そのまま放っておくとホコリがたまってしまうから、
たまには話しかけてあげる事。
長く時間をかけて大事にしてあげると、味わいのあるこけしになる。
正社員時代の頃を考えると、多分、
彼女自身もこけしと同じ立場だったんじゃないかとも思えます。
こけしを働く人(正社員)に置き換えてみると…
①→社会という表舞台に立ち過ぎていては、大きな挫折を味わってしまう可能性がある。
だから、自分の家=日陰で体を休めるのも大事。
②→泣き過ぎるとボロボロになり、元気のない顔になってしまう。
③→苦悩は溜め込まず、時々誰かに相談出来ると良い。
いくつもの試練が待っているけど、
やがて自分にしか出来ない強みが発揮されるだろう。
まぁ、個人的な想像にしか過ぎないのですが、皆さんはどう思いますか。
こけしを好きになったのも自分を投影したからなのかもしれませんし、
過去の経験があったから、高橋にもこけしを通して伝えようとしたのかもしれません。
(高橋もこけしに自分を投影して、最終的にはマニアっぽくなってましたしね(笑))
最近では「多様性」を問うドラマが増えてきましたが、
本作はそれを「働き方は自由なんだ」に置き換えて表現した作品になってます。
これをきっかけに、見えないルールから解放される人が増えてくと良いですよね…。
45分間なだけあって起承転結の構成もまとまっていて、
最後まであっという間で楽しめました。面白かったです。
↓次回の大賞の感想はこちら↓