母、帰る〜AIの遺言〜 感想|奇妙だけど将来あり得るかもしれない家族の物語

 

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NHK土曜ドラマは、しみじみと良い作品を本当に多く生み出しますねぇ。

そして、「今だから出来る」ような現代的なモノも取り入れてきます。

 

今作のモチーフは「介護AI」。父の身勝手な性格が故、養子縁組を解消したいと

久々に実家に帰る息子だったが、ある日、死んだはずの母から電話がかかってきて…

それが実は、母が生きてる頃に自分の思いを残した「AI」だった。

そのAIがやがて、仲違いの父と息子の関係を修復してくれる重要な存在になる…。

以上が、ざっくりとした粗筋。

 

アプリに登録されている「AIの姿の母」が、スマホを通して

親子と3人で会話のやり取りをする様子は、まるで奇妙な世界観だと最初は思いましたが…

AIが発達してきている今、「いつか実現されるんじゃないだろうか」という

まんざら架空の話とも捉えられないような、現実世界とのスレスレな塩梅の良さが

視聴意欲をそそられて、最後まで気になって見入ってしまったんですよね。

 

でも、「AIが持つ恐ろしさ」を伝えようとかではなく、

どストレートに家族再生物語に直結させたのが良かったです。

家族でいる内に双方がぶつかり、悩み、不器用な態度を見せる…

人間臭い父と息子の姿が印象的でした。

また、それを柳楽優弥さんと奥田瑛二さんが見事に演じてくださいました。

あの橋でのシーンは忘れられないものになるでしょう。

 

喧嘩したまま、中々会いに実家に帰って来れないまま大切な人を亡くす事は多くて、

それで「あの時ああすれば良かった、仲直りしておけば良かった」と

いつまでも後悔する人は沢山いる。完璧に親孝行出来る子なんていない。

そんな現状がある中で、本作は、今その人が生きている有難さ、

悩んで向き合おうとするのが「家族の証」である事を、

AIという題材を通して伝えてくれた。背中を押してくれたんじゃないでしょうか。

 

古めかしい雰囲気の漂う「乾杯」という歌も、実家感溢れる部屋と重なって

良いチョイスだったと思います。

1/12(土)午前1時10分〜1時59分(金曜深夜)に

総合テレビで再放送が予定されてるので、気になった方は

よろしければ見てみて下さい♪