BRIDGE はじまりは1995.1.17神戸 感想|「地震」による変化と「自身」の変化を紡ぐ

 

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見応えありましたねぇ…。当時の様子をビデオカメラに収める設定にする事によって、

時々挿入される4:3比率の映像から感じられる苦悩や辛さが

より強く現われ出ていたと思います。

 

阪神淡路大震災から24年。

神戸が瓦礫だらけの街になってしまった事。

電気が点かず、大きな余震も続いていた事。

崖っぷちの状態から神戸を復興させ、今の街並みに繋げた

努力の積み重ねがあった事実は決して風化させてはならないし、

長い時間が経ってから本作を放送した意図には、

そんなメッセージ性も込められてはいたでしょう。

 

でも、ただ「過去にこの大災害があった事実」を

伝えるためだけのドラマではありませんでした。

ボロボロの街をヒーローが立て直す、希望をみんなが取り戻していくといった

ポジティブな面を描き上げるのではなく…

本作はあくまでも、その時代に生きていた人々の脆さ、人間臭さまでも覗き見る物語。

 

震災を狙って泥棒が入っていた事。

綺麗事を投げかけられて自分の心を閉じてしまう人がいた事。

「ここで死ねたら良かったのに」と思う人がいた事。

横断幕を見て「嘘でしょ?」と最初は感じてしまう事。

工事関係者が頑張ってるのを理由に、完成時期を前倒しされる事実があった事。

 

これらの要素を良い意味で淡々と描いていったからこそ、

"当時の日常"のリアリティさが滲み出て見応えが増したんだと思います。

 

但馬(小市慢太郎)が主人公たちに焼き鳥を差し入れするシーンは特に印象的でした。

ちょっとの気持ち次第で、希望が生まれるかもしれない。

人と人が繋がり始めて、輪を広げれば、何かが見えてくるかもしれない。

というのを見事に表したシーンです。

小市さんの演技にも見入りまして…問題に直面し泣き叫ぶ打たれ弱さもあるけれど、

芯には相手のためになりたいという優しさもある人物なのが凄く伝わってきましたね。

(個人的に「ケンカツ」からの悪人のイメージが払拭されたくらいには。)

 

主人公の設定も、何か特異な能力を持つキャラな訳でもなく、

ただの会社員で、物事に直向きに取り組む一人なのには変わりないというのが効いてました。

 

強いて言うならば、演出自体は派手にやっていないのに、

挿入歌を4,5回入れて泣かせようとしたのが若干見えてしまった所や、

放送後の露骨な「アナザーエピソードはU-NEXTで!」な宣伝には

ツッコみたくもなりました。が…

 

当時の事を知らない若者が出てきたから、

「あの時代はもう過去や」「十分過ぎる時間が経った」と

過去の自分に一区切りをつける春日(椎名桔平)の姿で物語を締める、

という作りは斬新で、最後まで興味深く見られたドラマだったと思います。

 

やっぱり、関テレ制作の作品は良いものが多いですね…!